手首や肘に頼りすぎる稽古の問題
合気道の稽古では、手首を返したり肘の角度を気にしたり、「肩が詰まっている」「肩が力んでいる」といった感覚で練習している人が非常に多いと感じます。
私自身も長い間そうでした。結果、いつもどこかで手首や肩でぶつかってしまうのです。
合気道で間違いを続けてしまう理由
では、なぜこうした間違いを続けてしまうのでしょうか。
それは日常生活での体の使い方がそのまま出てしまうからです。
ドアを開けるときは回して押し、引くときも抵抗を感じながら引く。
物を持ち上げるときも重さや硬さを感じて動かす。
私たちは普段から「対象物にぶつかり、その抵抗を感じながら動かす」という体遣いを無意識に行っています。
ところが合気道では、相手はただの物体ではなく、動く存在であり、目的は「移動させること」ではなく「バランスを崩すこと」です。
この違いを理解できないまま稽古すると、日常の癖が抜けず、いつまでも対象物を動かすような体遣いをしてしまうのです。
だからこそ、接点で争うのではなく、どうしたら相手が崩れるかを考え、日常の体遣いをやめることが課題になります。
二十年以上の稽古で気づいたこと
二十年以上続けてきて、あるとき気づきました。
――もっとシンプルに、「ここ(手首や肘)ではない使い方をした方がいいのではないか」と。
実際に、お腹の前面や腰、股関節などを使ってみると、驚くほど楽に相手を崩せるようになります。
初心者にわかりやすい方法
ただし「腰や股関節を使え」と言っても、多くの人にはすぐには理解できません。
そこで一番簡単な方法として「手首と肘を動かさず、肩から先を動かしてみてください」と伝えると、自然と肩の動きだけになります。
これを行うと、体の詰まりや力みが止まり、動きがスムーズになるのです。
相手に察知されにくい崩しの仕組み
さらに、手首や肘を使わないことで相手との接点が動かないため、相手は自分の動きを察知しにくくなります。
釣竿のしなりのように、肩から先をムチのように使えるため、相手を崩しやすくなるメリットがあるのです。
肩の基本的な動きの練習
やり方は、肩を上げて肩を下げる、肩こりを確かめるときのような動きです。
そこから前に出して後ろに引く、さらに前に出して、ぐるぐる回す、前方回転や後方回転といった肩の運動をします。
その動きをしたときと、実際に相手に持たれた手首や肘を使って動かそうとしたときとでは、抵抗感がまったく違うはずです。
明らかに肩を動かしたときのほうが、肩から肘、手首へと力が伝導し、相手を楽に崩せるのです。
体幹との連動へ発展する
そこからさらに体幹を使えば、横方向や回転の崩しも自然に展開できます。
ただし最初の段階では、肩を動かすことで手首や肘の詰まりをなくすという発見をすることが大事だと思います。
そうすると今度は相手との接点で争うのではなく、接点以外をうまく使って相手を崩すことが見えてきます。
同じ間違いからの卒業
これまでのように手首や接点で力み、相手とぶつかり続ける稽古は、まるで壁に頭を打ち付け続けるような同じ間違いの繰り返しです。
肩の動きを取り入れることで、その悶々とした稽古から卒業し、崩しを楽に行えるようになるのです。